大発明をした。
当時10歳の私は興奮していた。すごい仕組みを思いついたからだ。この仕組みを使えばニュースでやっている国の借金なんかもなくなるだろうし、国の使えるお金も増えたり、とにかくすごいことを発明した。いやでも落ち着け。もしかしたらイギリスとかフランスとか、ヨーロッパあたりの誰か賢い人がすでに気付いてることかもしれない。
そこで、中学の社会科の教師をしている父に、その発明を伝えた。
「僕思ったんだけどさ、例えば給料を500万円貰ってる人が10万円の税金を払うでしょ?でも2000万円の給料を貰ってる人の10万円と、500万円の給料を貰ってる人の10万円は、財布のダメージが違うやんか。だからいっぱいお金を持ってる人には多めの税金を設定したら、みんなの負担感はそんなに変えずに、今ニュースでやってる国の借金とかもなくなるんじゃないかな。」
「お、それはルイシンカゼイと言って、日本もそうしてるな。」
ショックだった。もしかしたらどこかの賢い人が、1人か2人くらい、気付いているかもしれないとは思ったが、そんな普通のことのように、しかもまさに今暮らしている日本でも既に、当たり前に運用している仕組みだったのか。騒いでいたのが馬鹿みたいじゃないか。
父は、累進課税制度と漢字で書いたメモを私に寄こそうとしたが、そんな物は要らなかった。自分が世界を変えてしまうかもしれないと思った大発明は、当たり前に誰かが既に思いついているし、名前まで付けられていることの証明になるメモは見たくもなかった。父は「なんだつまらんな。」と言ってそのメモをゴミ箱に捨てた。
あれから20年経った。私は結婚し、昨年の末には子供が産まれた。当時の私は、何と言ってもらえば自分の小物感を感じずに居れたのか。私の子供が何かを大発明するまでに、その答えを思いつきたい。